エルダーフォンの企画意図をnoteで公開しました
- YUMI FUJII
- 8月15日
- 読了時間: 2分
近年、デジタルデバイドの解消を目的として、政府や自治体は高齢者向けのスマートフォン講習会を多数開催し、多額の予算を投入しています。しかし、数時間の講習でスマートフォンの操作や利活用を本質的に習得できる高齢者は限られており、実効性には疑問が残ります。真に求められているのは「人が機器に合わせる」のではなく、「機器が人に寄り添う」アプローチです。
とりわけ通信キャリアや販売店においては、高齢者を巨大なマーケットと捉え、契約時に不要な有料アプリやオプションを抱き合わせることで収益を上げようとする傾向がみられます。さらに、費用を抑えたい高齢者には「1円スマホ」などの廉価端末が勧められますが、これらは操作性や視認性に劣るケースも多く、誤操作の原因となることもあります。
高齢者がデジタル弱者になってしまう背景は一様ではありません。視力、聴力、指の可動性、認知の特性、過去の機器使用経験、支払い能力など、極めて個別性の高い要因によって形成されます。眼鏡や補聴器を個人の状態に合わせて調整するように、スマートフォンも「誰にでも同じもの」ではなく、「その人にとって最も使いやすい設定」に最適化されるべきです。
たとえば、以下のような個別の情報を事前に把握し、それに基づいて端末を設定・調整することが必要です:
過去のスマホ・携帯電話の使用歴
現在の契約内容や支払い状況
視力、聴力、指先の可動性
利用目的(通話、LINE、写真、災害情報 等)
こうした情報を基に、不要なアプリや広告の排除、誤操作防止のための画面レイアウト変更、音声や表示サイズの調整など、機器側の設定を最適化することが、高齢者にとってのデジタル環境を飛躍的に改善します。
近くに詳しい家族がいれば解決できる問題かもしれませんが、実際にはそうした支援が得られない高齢者も多く存在します。その結果、せっかくスマホを手にしても、使いこなせずに放置したり、過剰な費用を払い続けるなど、逆にデジタルデバイドが拡大するリスクがあります。
今後のデジタル支援策では、「講習会の開催数」よりも「個々の状況に応じた機器の初期設定と継続的なサポート体制の構築」が重要です。高齢者にとって本当に必要なのは、万能なスマホではなく、生活環境や身体機能に応じて最適化された“パーソナル・スマホ環境”です。行政・事業者・地域の支援者が連携し、機器の個別最適化を前提とした支援モデルを制度化することこそが、真の意味での“誰一人取り残さない”社会を実現する鍵だと考えます。
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